まぁ、おおよその推測は出来ている上で様子を見たが
予想通りの展開になったと思う。
まず、この首脳会談は歴史的に見ても重要度が高い物となっている。
あえてここでオバマを批判しておこう。
2016年にオバマが広島に来たが、この広島来訪にはオバマ個人の理由が有った。
何より、内政・外交と経済政策でろくな実績を残していない事が理由となる。
任期終了間際に、出来るだけ大きな功績を作る為に日本を餌食にしたような物であり
マスコミはこぞって評価していたが、
実際はオバマが数少ない功績の中で唯一大きなものを必要とした結果に過ぎなかった。
対して、今回の米朝首脳会談は
北朝鮮が国策として仇敵としていたアメリカの大統領と直接会談する事は、
若干規模歳は小さいもののパリ会議やポツダム会談にも匹敵する内容となっている。
だが、この会談そのものを正しく見るには、その内容が問題となるだろう。
これは外交政策である事を念頭に置く必要がある。
そして、外交には常に外交カードの有無を知る必要も有る。
アメリカは国力で見れば外交カードは豊富な方であり
北朝鮮は外交カードが殆ど手持ちに無い状況だと言える。
唯一北朝鮮が頼れるのは、ロシアと中国だけで
他にも反米を掲げている中南米の国も有るが、戦略的にはあまり価値は見いだせない。
資本主義と社会主義の対立構造は米ソの冷戦時代から存在するが
ソ連が財政難に陥り、食料調達すらままならぬ状況に陥り
結果的にペレストロイカという大ナタを振るう事で、状況を打破し
東西の冷戦構造に一度は終止符を打った。
しかし、プーチンの時代になって以降、
資源は豊富でも資源の価格設定を牛耳っているのはアメリカであり
世界の経済システムにはロシアでも太刀打ちできないのが実情である。
ロシアが独自の資源価格の設定を用いるには、世界の資本主義体勢から自立する必要が出て来る。
されど、世界からアメリカ一強を退ける事は容易ではないので、
ソ連時代からの軍事産業に傾倒するしか手段が見出せないのも事実である。
かと言って国連やIAEAなど監視が有る中で、ロシアが兵器開発に勤しんでいれば
確実に国際社会から非難されるのは目に見えている。
そこで、手足のように自在に操れる衛星国家を必要としたわけだ。
それが北朝鮮だった。
中国は北朝鮮に限らず朝鮮半島全体を支配下に置きたいと願っているのは
かなり前から知られている事だが、中国は出来るだけ穏便に事を済ませたいとも願っている。
だが、自国だけでなく支配下に置きたい国の経済が膨張すればするほどコントロールがし難くなり
それが暴走の火種になる事を考慮すると、 どうしても迂闊に手が出せない。
露骨に軍事を用いればたちまち世界中から攻撃を受けるのは目に見えているし
制裁が下れば、成長し膨張した経済が一気に萎んでしまい、国家は一気に破滅に至る。
故に中国は直接的には手を出さずに地味に削る策を用いている。
中国の経済成長はロシアにとっても目暗ましとしては十分に利用価値が有り
北朝鮮をコントロールし易い環境が整ったと言える。
つまり、この北朝鮮問題の背景にはロシアの経済政策上に於ける問題が潜んでいるわけである。
アメリカの北朝鮮の背後に中国ではなくロシアが居る事は十分に承知した上でも
なおアメリカの外交カードの方が多いので、強気で行けるのだが
実はここには反作用も存在している。
北朝鮮は崖っぷちの背水の陣を演じる事で、
アメリカの外交カードを浪費させる策を用いてきている。
手持ちの外交カードが無い事を示せば、持っている方が出すしかない。
まさにトランプの7並べと同じである。
7並べに限らずゲームは先に投了した方が負けなのだが、
北朝鮮にとっての唯一の切り札が核物質の保有なので、
この外交ゲームの場合、アメリカが先に投了してしまう事も可能となる。
要は特定の線引きを行い、妥協によって本問題を解決しようという策である。
最終的に北朝鮮が核物質と濃縮プラント等を破棄する事で折り合いを着けるのであれば
ある程度の妥協点は見いだせる事になる。
その妥協点とは、以前も書いたが、北朝鮮への経済支援が全てという事になるだろう。
アメリカは直接北朝鮮に対し経済支援をする事は出来ないので
国連を持ち出し、世界の先進国に適度に支出させる顛末になるだろうと思う。
とは言っても北朝鮮は過去に数回、核廃棄の約束を違えているので
迂闊に信用する事は出来ない。
アメリカが支援出来ないのは、その北朝鮮の信用力も関係している。
迂闊に支援したけど、やはり裏切られました、ではお金をドブに捨てたよりも質が悪いので
一強であるアメリカの面目が丸潰れになってしまうので、
支援は断じて回避しなければいけない。
となれば同族の韓国が支援すれば済む話、となるのだが
韓国は出し渋り、日本にたかる姿勢を示すだろう。
もちろん日本だって迷惑極まりない朝鮮半島に支援など行う価値が無い事は承知の上だから
出来るだけ出さずに済む方向性を示す為に、拉致問題という切り札が有る。
結論
ある特定の情勢下では、外交カードは多い方が有利になるが
特定の情勢下では外交カードが少ない方が有利になれる場合も有る。
カードが少ない場合に於いては、そのカードの価値が情勢を大きく左右させる事が出来る。
北朝鮮は核という大きな外交カードをロシアから仕入れ
ロシアは北朝鮮を餌に、安穏とした軍事開発に勤しんでいるわけだ
アメリカが今後、本当の意味で解決しなければいけないのは
ロシアのそういう悪質な体質を覆す事だろうと思う。